深草の横取り四十萬

何をつくっているのでしょうか

2011-05-06 哲学道場・三つの基本方針

ここでは哲学道場の基本方針について説明いたします。
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1.哲学道場は「カラオケ」です

 哲学道場は哲学についての討論会です。ただし、その目的(telos)・存在意義(raison d'être, reason for existance)は主に素人の方に哲学的思考を発表、アウトプットしていただくことにあります。「素人」というのは哲学の職業的な研究者や哲学を専攻しているわけではない人のことです。言い換えれば、哲学を趣味として楽しんだり、探求しているひとたちのことです。
 たとえば趣味のひとつとしての《音楽》を考えてみましょう。プロのアーティストが創った曲や唄を私たちはよく聴いています。そして聴く人のなかには「自分でも演奏してみたい、唄ってみたい!」と思うひともいるでしょう。彼女らには企業や同好の人々からカラオケやコピーバンドを行なう機会が提供されています。もちろんだからといってカラオケやバンド活動を楽しむ人たちが皆プロになりたいわけではありませんね。単に趣味として純粋に楽しみたい、実際楽しい!――本当にそれだけでしょう。カラオケが苦手な人はいても、カラオケが「役に立つか?」なんて本気で問題にする人はいません。では趣味のひとつとしての《哲学》はどうでしょうか? なるほど昔の偉い学者やプロの研究者が書いた著作や、一般公開された講義を聴く機会はまだあります。しかし、受け手である私たちにも言い分はありますし、自分独自の問題について語りたいと思うこともあるでしょう。でも哲学について語っても周りに聴いてくれる人がいるとは限りません。いや、むしろいないのが通常でしょう。
 哲学道場はカラオケのように、あなたに哲学について発信する機会を提供します。しかし、注意してください。この機会は《危険》で、責任はあなた自身にあります。その点はカラオケと同じです。あなたの唄はまったくウケないかもしれませんし、理解されなかったり、無視される可能性もあります。理解されても反論されるかもしれません。《自分はフェアな人間だ》と思っていても実際に反論されると不機嫌になりがちなものです。「カラオケは忍耐力を鍛えるためにある」と言われることがありますが、哲学道場もまた、あなたに洗練は求めませんが、辛抱強さは求めます。
 しかし、とにかく、主役は飽くまでも発信するひと、発言するひと、何か言いたいあなたです。未熟であることや知識がないことはまったく気にしません。いや、気にする人がいたとしてそれが何なのでしょう? 哲学道場では日常的な利害関係や「空気」はありません。大切なことはあなた自身を表現し、ぶつけ、その一貫性をみせることです。あなたのこだわりをみせてください。

2.当事者主義

 哲学道場はボランティア団体の一種です。政府とも大学とも企業とも関係せず、有志によって運営・維持されています。ですから、基本的には「したい者がしたいことを行なう」という原則で営まれています。これは悪く言ってしまえば「何もしない者、汗をかかない者が口を出すな」にもなりがちですが、しかし、どんなボランティア活動も一定の批判を受け入れながら行われるものですし、できる範囲でベターなものに切り替えていくしかありません。また、プラットフォームをつくればタダ乗りしてくる利用者もいるわけですが、彼女らを歓迎できるだけの力量がなければそもそもプラットフォームをつくろうとは思わないでしょう。批判は受け入れつつ、現状も見据えつつ、持続可能で実現可能なかたちで哲学道場を盛り上げていくことが運営にとっては常に課題となっています。コミュニケーション、あるいは《対話》の意味は哲学的であろうがなかろうが、まさに今、現場にあります。そして常にそこにあるものです。
 そういった抽象的な課題がある一方で、哲学道場の運営に関わるひとたちの間でも動機づけは様々です。話し相手がほしい、哲学について話したい、弁論を磨きたい、頭の体操などバラバラで、ときには必ずしもかみあっていないこともありますが、とにかく「哲学」に何らかの執着・愛着・こだわり、あるいは憎悪を持ち、討論という実践的で或る意味では泥臭い活動を続けています。動機が多様であり、またそうならざるを得ない以上、原則として運営上の実行当事者は受益者と等しいことが望まれます。

3.伝統の尊重

 哲学道場は現在の体制としては2005年の「哲学道場高円寺」から続いていますが、それ以前も哲学道場の活動は続いていました。
 京都には1993年に設立された社会教育NPO「STUDY UNION」さんがあり、そのなかで生まれ、育まれ、派生してた幾多の勉強会や討論会のひとつが「哲学道場」なのです。そのため、スタディユニオンさんの自由闊達(じゆうかったつ)・談論風発な議論の雰囲気や当事者主義といった文化・風土を継承しています。
 哲学道場は《カラオケ》であり、哲学について発信する場だと書きました。しかし、日本全国を見渡せば哲学に限らず学問的なことについて発信する場所は皆無ではありません。各地の《哲学カフェ》や大阪の《現在思想の会》、《京都大学哲学研究会》など大学のサークル活動や自主ゼミ、《哲学塾カント》のような私塾が存在します。何か発信する場を探している方は自分にマッチしそうな場所を求めてこれらの場所に行ってみることでしょう。哲学道場は飽くまでもそれらの選択肢のなかのワンノブゼムに過ぎません。
 では他の選択肢にはない《哲学道場の特徴》は何か? そのひとつが上記の《伝統》であり、スタディユニオンさんから受け継がれたアナーキーで「空気」の無いあけすけな遣り取りです。「それを言っちゃおしまい」や「ちゃぶ台返し」は日常チャメシ事であり、統一した結論や《まとめ》などはありません。「不毛だ!」と怒るひとすらいますが、「いつものことさ」と猛者たちは笑っています。予定調和を排し、嘘のないオープンなコミュニケーションをすること、インターネットの掲示板ではみることのできない《生の声》に触れること、理解できない相手と遭遇(encounter)することを大切にしております。一言で言えば、もっともパンクな場所、それが哲学道場です。


以上、カラオケ主義・当事者主義・伝統主義の三つの点から哲学道場の本質的な姿勢について説明いたしました。みなさんの積極的な参加と発言を切望しております。

哲学道場世話役 深草


哲学道場
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