深草の横取り四十萬

何をつくっているのでしょうか

2012-06-20地球人の言葉遣い

2012-06-20地球人の言葉遣い
地球人の不思議について列挙してみたもののうち、「言葉になぜか暗黙の有効期限がある」と感じた点について、さらに考えてみた。すると、地球人は大雑把にみて三種類の言葉遣いを使い分けているようだと気がついた。以下に並べてみよう。

A.学問的な言葉遣い

学問の場面においては、有効期限が無い言葉遣いがなされるのが理想であろう。言い換えれば、超時間的、永遠的な言葉遣いである。たとえば、哲学上の純粋概念も数学上の定理も時間を度外視したものである。概念自体(純粋概念、概念としての概念)を扱う哲学や経験的対象より上の抽象的な概念のみを扱うような数学では専らこの言葉遣いがなされていると思う。哲学において使用される点では理性(根拠)的な言葉遣いであり、数学において使用される点では非経験的ながら知性的な領域も含んでいる。
 また、学問的な言葉遣いは書き言葉において多くみられる。話し言葉よりも時間的な隔たりを超えた伝達を意識するものだから、当然だろう。

B.仕事的な言葉遣い

日常的な生活や仕事の場面でなされる言葉遣いの多くは、まるで耐久消費財のように時間が経つと自然に壊れる、すなわち無効になるものと捉えられているようだ。もちろん、時間経過によって無効になることが明示的な場合には「時効」「有効期限」というかたちで人為的に示されることもある(カタチあるものを人為的に廃棄処分するのと同様である)。このような言葉遣いで示されるのは、超経験的な概念というよりも経験に現れる存在者である。この意味で、数学よりも具体的でモノを遣り繰りするという意味での知性的な言葉遣いとも捉えられるだろう。

C.恋愛的な言葉遣い

本来、感受性は地球人の各個体ごとに全く独自なはずである。公共のやり取りは感受性の共通部分、あるいはコミュニケーションする当人同士で或る程度対称的であることを前提に行われるのだが、相手と自分とは異なるのだから、感受性に多かれ少なかれズレがあること、それどころか比べようもなくユニークであることは暗黙に前提になっている。
 そうした感受性(感じ方)というフィルターを通して得られたものを「気持ち」「感情」と呼ぶならば、それは本人にとってもどうしようもなく、動かしようのないものである(できることは、その気持ちを隠したり露骨にしたりすることや、環境に働きかけるといった間接的なことである)。
 このような「気持ち」を表現する言葉遣いをここでは「恋愛的な言葉遣い」と呼んでおく。たとえば「好きだ」といった告白の場面など念頭においてもらえればよい。これは極めて文脈依存的で、そもそも一般論としては表現できないはずのことを表現しているため、言葉の有効期限もあってないようなものである。別の言い方をすれば、有効期限ゼロの言葉遣い、瞬間的な言葉遣いとも言えそうである。
 恋愛的な言葉遣いは学問的な言葉遣いとは対照的であり、話し言葉で登場することが多いだろう。叫びやアドリブもここに入れられるかもしれない。


今日はここまで。